能登半島地震・水害被災地における
雪による影響とその対応について
能登半島では、2024年1月の能登半島地震と9月の大雨によって大きな被害を受けました。
関係機関による復旧が進められていますが、ここにさらに雪が降るとさらに被害が拡大する恐れがあります。
防災科学技術研究所雪氷防災研究センター、長岡技術科学大学雪氷工学研究室、新潟大学災害・復興科学研究所では、一般社団法人北陸地域づくり協会の助成を受けて現地調査を行い、20年前の新潟県中越地震での経験を踏まえ、今後の雪による被害の想定と対応について、次のように注意するべきことをまとめています。
1.傷んだ建物
地震の揺れや水害で弱った建物に多量の雪が積もると、雪の重みで建物の倒壊の恐れが高まります。また、屋根雪が積もっていると、余震によりさらに揺れやすくなります。さらに、多量に雪が降った後に雨が降ると、積雪がスポンジのように雨が溜まって重くなり、建物被害の危険性が高くなることも想定されます。外れた瓦が落ちてくることもあります。危険な空き家には近づかないようにしましょう。
2.屋根のブルーシート
地震被害にあった屋根の雨漏りの応急対策のためにブルーシートが屋根に敷かれているところも多いですが、ブルーシートの上に積もった雪は大変滑りやすく、思いがけない落雪による被害が心配されます。屋根の下はなるべく歩行しないこと。やむを得ず軒下を歩く場合は、足元だけなく上方にも目を向け注意して行動すること、落雪の可能性のある場所にはロープを張って立ち入りさせないなどの歩行者への注意喚起もお願いします。
3.傷んだ道路や歩道
地震の振動や液状化によって道路や歩道の段差や起伏、亀裂が残っています。さらに雪が積もると、これらが隠れてしまいスムーズな車の通行や歩行者の移動にも支障が出ます。普段よりスピードを抑え、周囲に気を配るなど、自動車の運転や歩行には気を付けてください。ガードレールが崩落している道路では、道路脇に寄らないように運転することも重要です。また、工事も重なり機械除雪がスムーズに行われず、時間がかかることが予想されますので、ガソリンのこまめな給油や時間に余裕をもった行動を心がけてください。
4.倒木による停電や孤立
地震や水害によって木や竹、電柱が傾いて倒れやすくなっています。ここに、2022年ならびに2023年12月のように湿った雪が多く降ると、倒木や倒竹によって停電や通信障害、集落の孤立が起こる可能性があります。携帯のこまめな充電や食料・水・燃料の備えもお忘れなく。
5.雪崩
地震や水害により土砂災害が多く発生しています。斜面の積雪を支えていた樹木が無くなっているところも多く、雪崩の危険性が増しています。危険な斜面には近づかないようにしましょう。まとまった雪が降ったあと、気温が上がったとき、に特に注意が必要です。
6.融雪災害
土砂災害発生箇所では、土砂自体の強度が弱っていて、春先に融雪や雨によって水分がさらに供給されると土砂と雪が崩れる現象など被害の拡大も懸念されます。20年前の中越地震では地震後3年間も春先に融雪災害が発生しました。危険な個所には近づかいようにしましょう。
7.消雪パイプの被害
消雪パイプが地震によって機能が発揮されないことがあります。
8.海岸に近いう回路
海岸線に近いところに迂回した道路は越波にも注意しましょう。
9.車中泊
やむを得ず車中で過ごす場合は、エンジンをかけっぱなしの状態で車のマフラー(排気口)が雪に埋まると、排気ガスを車内に取り込み一酸化炭素中毒になる危険性があります。ときどき、マフラーの周りの積雪を確認し、積もっていたらスコップなどで除雪してください。
被災地には、雪の降らないところからもボランティアや工事業者が多く入っています。
雪対応に慣れていない方も多いことも忘れずに行動ください。
今後、能登半島被災地の雪への影響、注意喚起について情報発信する予定ですので、ご利用ください。
| 本件に関するお問い合わせ先 |
防災科学技術研究所雪氷防災研究センター 特別研究員 上石勲 |
| 新潟県長岡市栖吉町前山187-15 |
| 0258-35-7520 090-5828-7813 kamiisi@bosai.go.jp |